鮪の“顔”と向き合う時間〜生本鮪の頬肉が教えてくれること〜

皆さん、こんにちは。鮨畑です。今日は少し特別な部位、「生本鮪の頬肉(ほほにく)」を扱った時の体験をお届けします。

頬肉というと、あまり馴染みがないかもしれませんが、実は一匹の鮪からほんのわずかしか取れない部位。一頭から二枚、わずか数百グラム程度です。

筋繊維の力強さと、脂の繊細な艶。まさに“職人冥利に尽きる素材”です。

動かすから旨い、動かすから硬い

頬肉は、鮪が泳ぐときにもっともよく使う筋肉のひとつです。つまり、「動く=旨味が詰まっている」ということ。赤身らしい濃さと、まさにお肉、非常に表情豊かな部位です。

ただし、筋が強くて包丁の技術も問われます。最初に見た瞬間、「これは刺身より“握り”の勝負だな」と感じました。筋が口の中に大変残りやすいので、しっかりと細かく、深く隠し包丁を入れないと触感が大変よろしくないんです。
握った時にシャリとの一体感が出る厚さに調整するのもポイントです。

頬肉の“表情”を読む

職人としていつも思うのは、魚の部位にはそれぞれ“表情”があるということ。大トロの艶やかさ、中トロのバランス、赤身の潔さ…。そして頬肉は、少し荒々しい、でも優しさのある顔をしています。

ほほ肉は血の味が強いので表面を軽く炙って勝負。見た目はまさに焼肉(笑)ですが、食べた瞬間にバチっとインパクトが強いので、さっと口の中で消えていくお鮨というよりは、荒々しい味わいかもしれません。

お客様の反応がすべて

あるお客様が「今まで食べたどの鮪よりも、印象に残る」と言ってくださったのがとても嬉しかったです。「部位がわかると、寿司ってもっと楽しいね」と、皆さんの会話にも広がりが出ていたのが印象的でした。

やはり、こうした希少部位を扱える喜びは、「説明できること」「表情が変わる瞬間が見られること」に尽きます。

包丁が語る、素材との“対話”

写真の左にあるのは、私 鮨畑 が普段から使っている柳刃包丁。鋼の刃先は、手入れが大変な分だけ、切れ味の美しさが違います。特に頬肉のように筋繊維が複雑な部位を扱う時は、包丁の精度がそのまま味に出るんです。

包丁と素材がすっと交差したとき、何も言わなくても「あ、今うまくいったな」という手応えが返ってきます。寿司は対話の仕事。魚とも、道具とも、お客様とも向き合う時間こそが、職人の喜びだと感じます。

皆さんも“魚の顔”を感じてみませんか?

鮪という魚は、部位によってまったく違う表情を見せてくれます。背中、腹、カマ、そして今回の頬肉…。それを知って味わうだけで、寿司はもっと楽しく、深くなる。

私 鮨畑 は現在、笹塚「鮨川」で修行をしながら、東京を中心に出張鮨サービスや寿司握り体験を行っています。英語でのご案内も可能ですので、海外からのお客様にも安心して楽しんでいただけます。

希少部位を含むご相談も、柔軟に対応しておりますので、「こんな魚、食べてみたい」「こんなイベントで寿司を出したい」など、お気軽にご相談ください。

東京での出張鮨、希少部位を楽しむ寿司体験なら、鮨畑にお任せください!