寿司職人がブンタウの市場と寿司屋を本気で視察してみた|ベトナムの魚事情リポート

皆さんこんにちは、鮨畑です!

前回の記事ではベトナム・ブンタウの街の第一印象をお伝えしましたが、今回はいよいよ本題。寿司職人として最も気になる「魚」の話です。

ブンタウは海に面した街。当然、魚介類は豊富なはず。でも「魚がたくさんある」ことと「寿司に使える魚がある」ことは、まったく別の話なんですよね。

今回は、早朝の地元市場への潜入と、現地の寿司屋での食事体験を通じて感じたことを、寿司職人&元農家の目線で正直にお伝えします。

早朝5時40分、市場へ潜入

滞在中、朝5時40分に起きて地元の市場へ向かいました。Google Mapで事前にチェックしていたのですが、到着してみるとまだ人はまばら。広い市場なのに、魚がまだ並んでいない。

しばらく歩き回ってようやく魚売り場を見つけたのですが、最初に目についたのは野菜コーナーでした。実はこの野菜がすごかった(これは後ほど詳しく書きます)。

市場の魚たち:種類は豊富、でも…

市場に並んでいた魚を寿司職人目線でチェックしていきます。

まず目立ったのがタチウオ。かなりの量が並んでいました。そしてエビも豊富。ベトナムの海の豊かさを感じます。

カツオもたくさんありました。「カツオがあるんすよね、カツオ多いっすね」と動画でも思わず繰り返してしまったほどです。日本でもお馴染みの魚がベトナムの市場に普通に並んでいるのは、やっぱりワクワクします。

他にもサワラっぽい魚マナガツオ系の魚(ただし日本のものとはタイプが違う)、イトヨリダイ(現地ではよく獲れるらしい)、スズキらしき魚、そしてカンパチ?と思われる魚も。「これは使えるぞ」と思わずテンションが上がりました。

貝類やイカ類も充実していて、赤貝に似た貝コウイカなども並んでいました。エビと貝類に関しては、かなりポテンシャルを感じましたね。

ただ、寿司に使えるかというと…ここからが問題です。

寿司職人として気になった「3つの課題」

1. 氷の処理がされていない

これが最大の問題でした。市場の魚は、基本的に氷の処理がされていません。鮮度管理の観点からすると、寿司のネタとしてそのまま使うのはかなり厳しい状況です。

日本では、魚が水揚げされた瞬間から氷で温度管理をするのが当たり前。この「冷やす」という工程がないだけで、魚の品質は大きく変わってしまいます。

2. 全部「野締め」

市場で見た魚は、すべて野締め(のじめ)でした。野締めとは、自然に死んだ状態の魚のこと。対して日本の寿司屋で使う魚は、活け締めや神経締めといった方法で、鮮度を最大限に保つ処理をします。

野締めの魚は、身がダレやすく、味も落ちやすい。寿司のネタとして使うには、ここの改善が不可欠です。

3. 漁師との直接交渉が必要

市場で売られている魚をそのまま買うだけでは、寿司に適した品質は確保できません。漁師さんと直接つながって、締め方や保存方法を交渉する必要があります。

これは実は、私が農家をやっていた頃にも感じていたことです。当時、料理人さんたちが農家に直接会いに来て、「こういう野菜がほしい」「この収穫タイミングで出してほしい」と交渉していました。魚も同じで、「どう獲って、どう処理するか」を川上から一緒に作っていく必要があるんですよね。

ブンタウの寿司屋を訪問

市場だけでなく、実際にブンタウにある寿司屋も訪問しました。仏像の近くにあるお店で、ランチセットが約900円。日本より少し安いかなという価格帯です。

注文した握りには、ホッキガイ、ハタ系の白身、キハダマグロらしきもの、エビ(種類は不明)、シャコ、ツブ貝、本マグロの大トロ(!)、ウニ、いくら、ネギトロなどが並んでいました。

正直な感想を言うと、ちょっと怖いなと思うネタもありました。エビの色味が気になったり、初めて体験する食感のものがあったり。大トロやウニも入っていましたが、価格を考えると仕入れルートが気になるところです。

とはいえ、ベトナムでこれだけのネタを揃えて握り寿司を提供していること自体はすごいこと。寿司文化がここまで来ているんだなと率直に感じました。

元農家が市場の野菜に大興奮した話

魚のレポートの記事ですが、どうしても書かせてください。市場の野菜が本当にすごかったんです。

なんと、コールラビがある。ミサキ(岬キャベツの一種)がある。さらにスティックセニョール(茎ブロッコリー)まで!日本のスーパーでもなかなか見かけないような野菜が、ベトナムの市場に普通に並んでいたんです。

6年半、岐阜で有機農家をやっていた人間としては、これはたまらない光景でした。「料理は正直得意じゃないけど、この野菜を見たら料理したくなる」と素直に思えるほど。

ただし、葉物野菜は冷涼な気候が必要なので、ベトナムの暑い時期にこの品質が維持されるかは気になるところです。いずれにしても、ブンタウの野菜のポテンシャルには、元農家として大きな可能性を感じました。

まとめ:ブンタウで寿司はできるか?

結論から言うと、「今すぐ」は難しいけれど、「可能性」は十分にあると感じました。

魚の種類は豊富です。カツオ、タチウオ、マナガツオ系、イトヨリダイ、エビ、貝類、イカ…。素材の選択肢はある。でも、鮮度管理と処理方法という、日本では当たり前のインフラが整っていません。

もしブンタウで本格的な寿司を握るなら、漁師さんと直接つながり、締め方や氷の処理を一から教えていく必要がある。それは農業で言えば「産地づくり」に近い作業です。時間はかかりますが、やりがいのある挑戦だと思います。

2026年3月には1ヶ月間ブンタウに滞在する予定です。今度はもっと深く、漁港や漁師さんとの接点も探っていきたいと思っています。


動画でも市場の様子や寿司屋の食事をたっぷり撮影しています。ぜひ合わせてご覧ください!


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