【下呂温泉】肉寿司に寿司職人が完全敗北!せんべい皿が天才すぎた
皆さん、こんにちは!鮨畑です。
先日、岐阜県の下呂温泉へ行ってきました。日本三名泉の一つとして名高いこの地で、私は寿司職人としてのアイデンティティを揺さぶられる体験をしてきました。
まず「ゲロ」という地名について触れさせてほしい
下呂温泉、と聞いて皆さん何を思い浮かべますか?名湯?飛騨牛?いえいえ、この街が全力で推しているのはカエルです。
なぜか?「ゲロ」と「ゲロゲロ」をかけているからですね。
いや、待ってくれ。日本三名泉だぞ?もうちょっとこう...高尚な路線でいけたのでは?と思わなくもないですが、街を歩けばカエル、曲がればカエル、神社に行けば七福神が全員カエル化している。この振り切り方、私は嫌いじゃないです。
バターミルクの足湯という狂気
温泉街を歩いていると「GERO GERO BUTTER STAND」なる施設を発見しました。黄色い壁にカエルのロゴ。可愛い。で、何があるのかと覗いてみたら...

バターミルクの足湯。
は?
いや、足湯は分かる。温泉地だからね。でもバターミルク?足をバターミルクに浸けるの?お肌がしっとりするとか書いてあるけど、それ本当?
そしてお湯の中には牛のオブジェがちょこんと佇んでいる。シュールすぎる。なんだこの空間は。温泉に来たはずなのに、気づいたら牛と一緒に乳製品に足を浸けている自分がいる。下呂、攻めてるな...。
ちなみに温泉上がりにはちゃんとコーヒー牛乳も飲みました。「ゆ」の暖簾をバックに、レトロな瓶で飲むコーヒー牛乳は格別です。これぞ正しい温泉の楽しみ方。バターミルク足湯の後だと、なんだか牛への感謝が深まりますね。

そして問題の肉寿司である
さて、本題に入りましょう。
温泉街を散策していた私の目の前に現れたのは、せんべいの上に載った肉寿司でした。
「......ん?」

手のひらサイズのせんべい。その上に、美しいピンク色に輝く飛騨牛が2貫。そして焼き目のついた飛騨牛が1貫。ネギがちょこんと乗っている。
3貫全部肉。
魚、いない。
私は毎日東京で魚の寿司を握っている人間です。マグロ、ヒラメ、コハダ、ウニ...毎日魚と向き合い、魚と対話し、魚に人生を捧げている(言い過ぎ)。そんな私の目の前に、魚が一切いない寿司が現れた。
これは...寿司なのか?いや、シャリはある。ちゃんとシャリがある。酢飯の上にネタが乗っている。構造的には寿司だ。でもネタが肉。全部肉。
「まあ、食べてみるか...」
一口。
...............うまい。
いや、ちょっと待って。認めたくない。私は魚の寿司職人だ。肉寿司に負けるわけには...
うまい。
飛騨牛の脂がね、口の中でとろけるんですよ。シャリの酸味と合わさって、なんとも言えない幸福感が広がる。焼いてある方も、香ばしさとネギの風味が絶妙で...くそ、うまいな。
そして食べ終わった後、私は気づいてしまった。
皿がない。
いや、正確には皿はあった。せんべいという形で。でも私はそれを食べた。寿司と一緒に。つまりゴミがゼロ。
これは...天才では?
観光地で食べ歩きをすると、どうしてもゴミが出る。プラスチックの皿、割り箸、包装紙...。でもせんべい皿なら?全部食べられる。環境に優しい。SDGsの極致。いや関係あるか分からないけど、とにかくすごい発想だ。
下呂、やるな...。
龍の瞳という幻の米
街を歩いていると「龍の瞳」というお米のパッケージが目に入りました。龍のイラストがカッコいい。

以前農業を営んでいた時に、近所の農家さんからいただいたことがあり、今も美味しかったという記憶だけはしっかり残っています。
ただお寿司に向いているお米ではありません(個人的感想)
調べてみると、これは2000年に下呂市で今井隆さんという方がコシヒカリの田んぼで発見した突然変異の米だそうです。通常の米の1.5倍の大きさがあり、しかも遺伝子検査をしても親が特定できないという謎の米。地元では「龍神様からの贈り物」と呼ばれているとか。
龍神様からの贈り物...。なるほど、だからこの地には肉寿司やバターミルク足湯といった革新的な文化が生まれるのか。全部龍神様のおかげだったのか。(たぶん違う)
カエル化した七福神
温泉街には七福神をモチーフにした像が点在しているのですが、下呂らしく全員カエル化しています。
恵比寿様の像の前に行ってみると、緑色の巨大なカエルが鯛を抱えて座っていました。周りには色とりどりのカエルの絵馬がびっしり。「商売繁盛の神」と書かれた看板。

私も寿司職人として商売繁盛をお願いしてきました。カエルの恵比寿様に。文章にするとなかなかシュールですね。
霧に包まれた温泉街
曇り空の下、霧が山を覆い、柳が川面に影を落とす風景は実に風情がありました。川沿いの道を歩くと、古い建物と灯籠が並び、「下呂温泉」の文字が刻まれた大きな灯籠が静かに佇んでいる。

夕暮れ時、灯籠に暖かい光が灯ると、温泉街全体が幻想的な雰囲気に包まれます。山々を背景に、霧の中に浮かび上がる温泉街の姿は、まるで時が止まったかのよう。
雨に濡れた石畳を歩きながら、私は思いました。
「今日、私は肉寿司に負けた」と。
でもいいんです。負けを認めることも大切。寿司は魚だけじゃない。土地には土地の食文化がある。下呂には飛騨牛があり、龍の瞳があり、そしてカエルがいる。それを尊重し、楽しむのが旅の醍醐味ですよね。
...でも明日からはちゃんと魚の寿司を握ります。それが私の仕事なので。
結論:下呂温泉、カエルと肉寿司とせんべい皿とバターミルク足湯の街。完全に侮っていた。すまん、下呂。
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